実写映画「るろうに剣心」感想


1994〜99年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載され、テレビアニメ化もされて人気を博した和月伸宏の剣客漫画「るろうに剣心 明治剣客浪漫譚」を実写映画化。
伝説の「人斬り抜刀斎」と名高い緋村剣心明治維新以後、殺さずの誓いをたて、決して人を斬ることのできない「逆刃刀」を携えて町から町へ流浪の旅を続ける姿を描く。
主人公・剣心役に佐藤健、ヒロイン・神谷薫役に武井咲NHK大河ドラマ龍馬伝」や「ハゲタカ」で知られる大友啓史監督がメガホンをとる。

  • 上映時間:134分
  • 監督:大友啓史

キャスト

原作のマンガは多分全部持ってたし、アニメも見てた。
丁度世代とは言っても10年以上前なので、内容は結構うろ覚え。
予告編を見た時は佐藤健がワイヤーに引っ張られてるwとか笑っちゃったんだけど、公開後なんだか評判良さげで気になって見に行ってみた。


最初は邦画でトンデモチャンバラバトルものだからもっと寒いかと思ってた。
BASARAのドラマ(http://www.youtube.com/watch?v=tzkyDRRuQc0)みたいな……
でも全然アリな実写映画だった!面白かった。
アクションシーンが思ったより多くてかっこいいし、剣心役の佐藤健君が麗しいし、原作への敬意も感じるし、2時間の娯楽映画としてちゃんと楽しくまとまってた。

もし原作漫画と違うのは許せない!とかじゃないならおすすめ。
原作との違いもデスノ映画がアリならいける位だと思うんだけど。

あらすじ

明治11年。東京では、人斬り抜刀斎を名乗る男が誰かれ構わず斬りつける事件が発生していた。
亡父から継承した神谷道場を切り盛りする神谷薫(武井咲)が無謀にも男に立ち向かおうとしているところを、通りすがりの男が助ける。
その人こそ、幕末には反幕府軍の暗殺者として活躍した人斬り抜刀斎本人(佐藤健)だった。
今は緋村剣心と名乗り、斬れない刀を携え流浪の旅をしながら、どんな悪人でも決して命を奪わない不殺(ころさず)の誓いに従いながら人助けをしている。
偽者の人斬り抜刀斎の正体は、実業家の武田観柳(香川照之)に用心棒として雇われた鵜堂刃衛(吉川晃司)だった。
世界支配を目論む観柳は女医の高荷恵(蒼井優)に阿片を作らせ、それを元手に得た莫大な金で武器を買い漁っていた。
元・新選組で今は警官を務める斎藤一江口洋介)が観柳の目論みに気付くものの、観柳が握る絶大な権力を前になかなか手出しができない。
観柳は手始めに神谷道場一帯を手に入れるべく、市井の人々を殺そうとする。
神谷道場に身を寄せる剣心は苦しむ人々を見て、打倒観柳を決意。250人もの護衛をつける観柳に、剣心は喧嘩屋の相楽左之助青木崇高)とともに立ち向かっていく……。

話の大筋としては原作初期の刃衛の話と恵の話を混ぜた構成。
だけど斉藤が警察官として全編に出てきたり、剣心の過去回想で十字傷の1本目がつけられた経緯が出てきたり(巴の後ろ姿が出た!)色々混ざってる。


元人斬りの剣心が明治になっても何故逆刃刀で戦うのかを主軸に上手く再構成していたと思う。
例えば映画のオリジナルシーンで、雨の中斉藤と剣心が戦う場面があるんだけど、剣心が斉藤の斬撃を受けて逆刃刀の刃の方が自分の肩に食い込んでいって、斉藤が「向けられた刃は己を斬る」みたいなこと言ってあれこれ原作にあったっけと思った。あってもおかしくなさそうなシーンだったから。
原作の和月先生もパンフレットで褒めてたけど、そういえば逆刃刀って切れる方が自分に向くことになるんだよなってハッとした。
原作を蔑にせず、違うメディアで作品の核が再現できてる、理解ある映画スタッフって素晴らしい。

登場人物について

神谷薫(武井咲

薫は原作通り剣心を手配されてる「人斬り抜刀斎」と勘違いして切りかかる出会いで登場。
時々もう少し可愛くてもいいんじゃないかとか、前髪と最後の長セリフは何とかならなかったのかと思わなくもなかったけど、溌剌としていて良かった。若いし。
赤べこでピンクの着物着てたシーンは可愛かった。

明神弥彦(田中偉登)

物語始まった時点で既に薫の道場に通っている門下生だった。
この映画ではそんなに活躍の場はなかったけど思ったより近所の小汚いガキ(失礼)って感じだった。汚れ具合とかリアル。でも実際いたら確かにこんな感じなのかもなー

相楽左之助青木崇高

黄色くなかっ……いやそれはともかく、気付いたら仲間になってた。
えっと…ひょんなことで剣心=「人斬り抜刀斎」と知り、観柳にお金詰まれてスカウトされる剣心に勝負を挑み負けて、その後道場に病人が運び込まれるシーンで再登場、そのままパーティインして観柳邸へ一緒に乗り込む、みたいな。
行きずりの縁で一緒に250人とかの敵に立ち向かってくれるとかすげーいい人…!
原作での左之助が仲間になる過去回想含めたエピソードがないので暗い部分が皆無。
やんちゃで腹ペコな気のいいチンピラ兄ちゃんだった。悪一文字はきっとただのファッションだな。

高荷恵(蒼井優

大筋は変わらず医者の血筋の人間で、身寄りをなくして観柳に囲われていて阿片作りに加担していた。原作では確か毒薬作ってると知らなかったけど映画ではばっちり人体実験とかしてた。あと観柳の情婦設定だった。
蒼井優の過剰なツリ目メイクは原作絵に近づけようと頑張ってるのがわかるし演技も上手だけど、やっぱり薫と並ぶと妖艶な大人っぽい美女には見えなかったなぁ。
原作のキャラ再現の意味ではちょっと厳しかったキャスティングだったけど、映画劇中ではそこまでに違和感がなかった。

緋村剣心(佐藤健)

とても良かった。イケメンだし!
衣装だけ借り物のコスプレじゃなくちゃんと実体を持った実写版剣心になってた。
最初に登場した時はふわふわしたゆるい滑舌の口調で弱そうに「おろ」「〜でござるよ」とか言っててうわぁ…と思ったんだけど、展開が進むうちに慣れてきて、赤い着物を着るシーンではもう違和感がなく剣心になってた。すごい!
抜刀斎は剣心とは全然違って、佇まいや発声なんかも全て鋭くて、別人のようだった。鋭い抜刀斎でいる場面が続くと、ゆるい剣心が恋しくなったりw
剣心と抜刀斎の人格が破綻せずナチュラルに内包してるのが剣心なんだなーと思わせられて、とてもマンガ的であるキャラクターをよくここまで再現できるなーと感心。
構えだったり、着地のポーズがあーこれマンガで見たわ!と思い出すような動きをしてたのも嬉しかった。

斉藤一(江口洋介)

江口洋介斉藤一はメインの中では一番原作からかけ離れてると言うか近づける気がないと言うか…別キャラだったなぁと。悪即斬っていうか悪即逮捕みたいな。
立ち姿の存在感あったし、映画のキャラとしては良かった。
なんかスピンオフとかで熱血不良刑事・藤田ゴローの事件簿とかできそうだなって思った。
映画牙突はシャンデリアアタックに改名すべき。

その他

悪役の皆さんもいい味出してた。
香川照之の武田観柳は原作にコミカルで嫌らしい成金悪党感が足されてて、こいつは一泡吹かせたいと思うようなキャラになってた。結構好きw
吉川晃司の刃衛は白目に黒いカラコンしてて最初はうわぁ…となったけど、佇まいに強そうな人外感というか、道を外してしまった人斬り感があっていいなーと。
外印は最初外印だとわからず、般若?蒼紫?サクラ2のラスボス?とか思ってスタッフロール見たら外印サンだった衝撃。番神(こいつもわからなかった)もいたし人誅編はやる予定がないのかな?

アクションシーン

一番の見どころはやっぱアクションシーン。
思ったよりかなり戦う場面が多くて、勿体付けずどんどんバトルが始まるので爽快感があった。
スタントやCGをほぼ使わず演じてるそうで…すごいな。
カメラワーク早くてどんどん切り替わっていって視認できない部分も多かったからまた見てみたい。
序盤でほぼ剣心無双で小柄な剣心が図体のでかい悪者を鬼スピードで倒してくのはかっこよかった。俺TUEEEEE好きな小中学生男子とかにもウケそう。


チンピラ相手に徒手空拳で戦う剣心とか、斉藤と雨の中でバトルとか、過去回想で京都の抜刀斎の戦いとか、逆刃刀剣心VS斬馬刀左之助とか、250人のチンピラザコ相手に剣心+左之助無双とか、佐之助の拳対決イン調理場とか、ガトリングガンVS佐之助・剣心とか、覚醒剣心VS刀衛とかそれぞれのバトルがシチュエーションが違って面白かった。
戦闘が敵や舞台や武器で差別化されて工夫されてるので、それぞれ印象に残りやすいなと。
逆刃刀って要は血が出るまで峰でぶっ叩くから平気でござる!ってことだからザコに対して体術で戦う剣心は良かったw
逆刃刀剣心VS斬馬刀左之助も橋を挟んで大勢のギャラリー前での戦いで、舞台フル活用で面白かった。剣心がジャンプして斬馬刀に乗るシーンとか、ちゃんと原作であるんだね…w
最後の刀衛との対決にしても多分ほぼ原作通りなんだけど、薄暗い竹林の中の焚火が舞台装置として映えてて印象的だった。乱戦とは別の実力者同士の戦いで美しいシーンになってた。
それにしてもなんで双龍閃だけ技名出てきたんだろうw

音楽

…はちょっと残念だったかも。なんかもう少し明治要素がほしかったというか、コレジャナイ感があった。
主題歌もかっこいいけど、本編終わって英語が流れてくるのはちょっとズコーってなった。しかもなんで途中から日本語なのかと…
アニメの時のOPED歌った歌手引っ張ってくればいいのにって思ったけど、あれはソニーで今回ワーナーだから無理だったのね…

まとめ!

そんな感じで盛りだくさんだった。映画楽しかった。
映画行った帰りにカラオケ行ってアニメるろ剣のOPED入れて映像見てたら、結構アレンジしてあると思ったけど映画は原作とかアニメちゃんと意識してんだなーと気づいた…アニメは結構昔の映像だから笑っちゃったけどw
映画最後の〆があれなのは多分アニメOPからの原作京都編の終わりのリスペクトだよね。


少年マンガ原作ではあるんだけど、映画だとアメリカとかでよくあるお国柄を反映したヒーローものの日本版みたいな印象も受けた。
剣心て一見優男風イケメンで、出世欲・名誉・金欲・奢りがなく清貧で困ってるものを見捨てず、暗い過去と対峙しながら、己の信じる剣の誇り(武士の魂?)を守り、笑顔を浮かべる、みたいな……改めて見ると日本の美徳とされそうなものを詰めたキャラクターで、マンガ読んでた時には特に思わなかったんだけど、とても日本らしいヒーローだったんだね。


実写で時代物でキャラ立っててイケメンがいてトンデモ要素あるチャンバラバトルものってあるようでなかった間口が広いタイプの映画な気がするので、シリーズが続いて更に大きな作品になるといいな。またこの座組みでるろ剣映画が見たい。
希望としては次は観柳邸でハブられた御庭番集編やって、その次に何部作かで京都編やってほしい。
あと今回ちらっと巴さんの後ろ姿とか出てきたので、人誅編はアレだけど十字傷の回想はやってほしいなぁ。


余談。薫殿をお姫様抱っこするたけるん剣心かっこいい!姫抱きされたい!と思ってたのに例のスキャンダルの写真が出て、現実は惨いものだなと思ったりして…